はじめに~原産国別カカオの風味~
当初、漠然と「代表的な産地とその特徴を、ラインナップ(詳しくはカカオの産地とその味わい)」することを手がけてみたのですが、やってみるとこれが大変な作業であることに気づきました。
例えば、同じベネズエラという国のチョコレートでも、街や品種、農地によって味わいが随分違います。実際に口にせずとも商品のうたい文句に違いが見られるのです。
それでも当分は、この方針でやり続けていましたが、そのうちさじを投げました。
「だめだ、このままでは。集まる情報がばらばらすぎて、中途半端な記事になってしまう。」
そうこうしているうち、それがチョコレート界の現実なのではないか、と思い始めました。つまり、消費者が、「国別チョコレート、ベネズエラ産・エクアドル産・トリニダット産」とというセールスコピーを聞いて、「チョコレートは国によって(のみ)味が変わるのだな」と単純に考えたり、「ブレンディングが一番おいしい」と聞いて、思考停止に陥ったりしている、と思ったのです。
「この国のカカオならこういう味」とは簡単に片付けられない世界、つまり「この国のこの地方ならこういう風味がするよ。とくに、この農場のカカオは特級品だよ」という表現ができる世界が、カカオにはあるはずです。なのにどうして、このレベルのキャッチコピーしかチョコレート製品につかないのでしょうか。
例えば、
「エクアドル産は強いコクを持ちます」
という表現。決して、うそではありません。そういうエクアドル産カカオは本当に存在するでしょうから。でも実際にはエクアドル産カカオのすべてがその風味ではなく、地方や農場、品種によってもっと細やかな表現ができるはずです。
でもこれはおそらく、販売側と消費者、両者の問題。
消費者の側がそれでは納得がいかない、もっと知りたいという姿勢を見せないと、販売側もそれに追随してしまいます。あるいは、販売側が「○○国の○○地方の○○農場の特急品なのでそれなりのお値段がします」とアピールしても、客サイドが「難しいことはわからないからいい。とにかく安くておいしいのを頂戴」という姿勢なら、販売側はいくら売りたくても生産を控えるでしょう。
つまり、ようやく今、2000年を越えて、こだわりのチョコレートが日本の顧客にも理解され始め、おいしいものには多少高額でもかまわない というスタンスができてきたように思います。
「サロン・ド・ショコラ日本開催」に象徴されるように、フランスを中心とするヨーロッパのチョコレート文化が日本に随分浸透してきましたが、その潮流の中で、ますますチョコレートのクリュ(産地・銘柄)とテロワール(風土)が重要になってくる兆しがあります。
ブレンディングされたボンボンショコラがすばらしいハーモニーを奏でるのはわかりますが、再構成される以前のオリジナルの風味まで追求してみたい。酸味が強すぎたり、他を打ち負かしてしまうような強烈なカカオの風味を持っていたりと まだまだとんがっている野生のショコラを味わってみたいと思ったことは、ありませんか?
その後で、再びボンボンショコラを食べると、オリジナルのショコラがどんな風に変わるかがわかって、改めて感動を覚えるのではないでしょうか。
ショコラティエではない一般の消費者の立場では限界があるでしょうが、幸い、日本のチョコレートメーカーもショコラティエも、原産国別のタブレットを積極的に商品化し始めていますので、まずそちらをピックアップし、できるものについては試食もしていきたいと思います。
皆様も、クリュ別チョコレートの検証の旅に出かけましょう。